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なぜか支持率上昇の岸田内閣、菅内閣とどこが違うのか
(筆坂 秀世:元参議院議員、政治評論家

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新内閣が発足した際は、比較的高い支持率になるのが通常だ。菅義偉内閣は発足直後は70%前後もあった。だが1年後には30%を切る程までに急落した。

菅前首相は、決して実績がなかったわけではない。新型コロナウイルスワクチンの接種開始こそ欧米諸国に比べて遅かったが、1日100万回という目標を設定して、それ以上の接種回数を実現した。この回数は、当時ワクチン担当相だった河野太郎氏も無理だと進言していたものだった。多くの専門家もこの回数には懐疑的だった。だがそれを成し遂げたのだ。

携帯電話料金の引き下げも実現し、脱炭素社会の実現に向けた「2050年カーボンニュートラル」の目標も設定した。それなのに支持率は低迷し続け、1年で退陣に追い込まれてしまった。何がその原因だったのか。

菅内閣はなぜ急激に支持率を下げたのか

その理由は大きく言って2つあったと思う。1つは、新型コロナの影響を甘く見ていたのではないかと考えられることだ。安倍晋三首相と菅官房長官(2人とも当時)が強く推進した「Go To トラベル」は、その最たるものだった。朝日新聞2020年7月18日、19日に実施した世論調査では、「Go To トラベル」を7月22日から強行することに74%が「反対」と回答し、「賛成」は19%に過ぎなかった。当時の安倍政権の一連の対応も「評価しない」が74%を占めた。政府が「Go To トラベル」を全国一斉に一時停止することを決定したのは、菅内閣になってから3カ月経った2020年12月だった。

国民の声や専門家の意見を無視した結果、急激な感染拡大を招くことになった。この「Go To トラベル」の強行が、政府のコロナ対策への不信を大きく拡大させたことは間違いない。

水際対策は、自民党内からさえ厳しい批判を浴びた。今年(2021年5月12日に開かれた自民党の外交部会・外交調査会合同会議では、新型コロナの感染爆発が起きたインドや周辺国からの入国者に対する政府の水際対策に批判の声が上がった。佐藤正久外交部会長などは「水漏れでなく、水道管が破裂して水浸し」と表現し、外国人の再入国停止などに踏み込むよう注文をつけた。

東京オリンピックパラリンピックの開催前は、国民の間で反対・中止の声が沸き起こった。感染拡大が止まらないからだ。だがこれも無観客ということで強行された。開催後は、過去最多のメダル獲得など選手たちの大いなる奮闘があり、「開催して良かった」という声が多数を占めた。だが危惧したとおり、この間も感染が急拡大した。

菅政権はワクチン接種を大いに進めた。であるにもかかわらず、コロナ対策は評価されなかった。なぜか。それがもう1つの理由だ。説明不足である。

菅氏は官房長官時代、記者の質問にまともに答えないことが特徴だった。だが、なぜか上手に応対していると多くの人に評価されていた。私は高い評価が不思議でならなかった。官房長官記者会見は、記者に回答するためだけのものではない。記者の向こう側には国民がいるのだ。だが菅氏はこのことをまったく理解していなかったと思う。菅氏の会見で伝わってきたのは、国民に何かを分かってもらおうという気はさらさらないということだけであった。

菅氏が首相になるとは考えてみなかったが、あの説明能力の無さでは苦労すると思った。蓋を開けてみると案の定だった。菅氏の会見で納得感を得ることは一度もなかった。あまりにも拙いので、聞いている方が恥ずかしくなったものだ。最後の記者会見では、若い記者に「逃げるんですか」と言われる始末だった。

政治家、なかでも首相は国民に自分の思い、考えを伝える能力が不可欠なのだ。それは上手に喋るということではない。国民に理解してもらおうという必死さだ。それがあれば伝わるものだ。

必死に聞き、喋っている岸田首相

一方、岸田文雄首相はどうか。内閣が発足したときの支持率は40%台という低いものだった。それが今では多くの調査で60%台に急増している。岸田首相の持ち味について、岸田氏自身が「聞く力」と「丁寧な政治」だと語っている。それが功を奏したのだろう。人の意見を聞かないのが菅前首相だと言われてきたので、ここでもその逆と言うことなのか。

0歳から高校3年生までの子どもへの10万円給付問題で若干の右往左往はあったが、全額現金給付も容認するという岸田首相の判断で決着を見た。自治体や国民の声に耳を傾けた結果だ。わずか10万円で公明党が言う「未来応援給付」とは大げさだが、コロナ禍子どもを抱える人たちの助けになればそれに越したことはない。

変異株オミクロン株の拡散を防ぐために、いち早く外国人の新規入国を禁止した措置も評価できる。WHO(世界保健機関)クレームを付けた程だ。同じ飛行機から1人でもオミクロン株の感染者が出れば、同乗者は全員濃厚接触者として隔離するというのもこれまでの政権にはない思い切った策である。

もちろん、隔離のための施設不足やホテル不足など課題はある。今後、オミクロン株がさらに拡大すればこの方針を変更する必要性も生まれてくるだろう。だがこのスピード感、大胆さは国民からも評価されているはずだ。オミクロン株の特性が分かっていない以上、最大限の警戒が必要なことは自明である。

菅氏は国会答弁で他の閣僚に振ることが多かったが、岸田首相は自ら答弁している。石原伸晃氏の自民党支部がコロナ助成金を受給していたことを巡って内閣官房参与を辞任した際にも、「混乱については否めない。申し訳ない」と陳謝した。この率直さも良い。岸田氏は、菅氏と違い、必死に説明しようとしていることが伝わってくる。菅内閣の失敗を教訓にしているのが岸田内閣なのだ。

記者会見でも菅氏の、すぐいらついた、そして質問にまともに答えないという対応と違い、実に丁寧に答えている。もちろんその回答がすべて記者にとって満足すべき回答ではないことも多いだろうが、ある程度は仕方がないことである。

アベノマスク廃棄処分は妥当

12月24日、岸田内閣は、来年2月に開催される北京オリンピックパラリンピックについて、閣僚や政府関係者の派遣を見送ると発表した。自民党内からは「遅すぎる」という批判も出ているようだが、そんなことはない。慌てる必要などもともとなかった。あえて「外交的ボイコット」という名前をつけることもしかったが、それで良い。「外交的ボイコット」など、所詮、中途半端な対応だ。やるなら選手派遣もしないくらいの強い姿勢を見せるべきだ。

1年間で倉庫保管料が6億円にも上るというアベノマスクについて、必要とする団体や個人には無料で配布し、それでも余ったものは年度内に廃棄処分するという決断をしたことも評価したい。アベノマスクは、いまや自民党最大派閥の会長となった安倍元首相のコロナ対策を象徴するものだ。そのせいかかどうかは知らないが、菅前首相もそのままに放置していた。大変な国費の浪費だった。わが家にもいまだに引き出しに入ったままだ。廃棄処分というのももったいないが、やむを得ないだろう。

この報道を受け、ネット上には次のような書き込みがなされているそうだ。

安倍氏に忖度しない岸田氏の英断に拍手!〉
〈この調子で安倍政権の闇をどんどん切り崩していってください。〉
〈毎年交付される政党交付金で自民党が全額買い取るべきだ。〉
〈この際、アベノマスクにかかわった企業や個人を明らかにしてくれ。〉

岸田首相は、事前に安倍氏に通知するという配慮をしたそうだが、首相は安倍氏の象徴であるアベノマスクを強制廃棄することによって、安倍内閣の負の遺産を解消することができたということになるだけではなく、安倍氏の言いなりではないという姿勢を示すこともできた。

元首相が頻繁にしゃしゃり出てくることは、みっともない上に、岸田内閣への国民の信頼を傷つけることになる。安倍氏ら元首相はこのことを肝に銘ずべきである。

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臨時国会閉会を受けて記者会見した岸田首相(2021年12月21日、写真:代表撮影/ロイター/アフロ)

(出典 news.nicovideo.jp)

第2次岸田内閣(だいにじ きしだないかく)は、衆議院議員、自由民主党総裁の岸田文雄が第101代内閣総理大臣に任命され、2021年(令和3年)11月10日に成立した日本の内閣である。 自由民主党と公明党を与党とする連立内閣(自公連立政権)である。 2021年10月4日発足の第1次岸田
29キロバイト (660 語) - 2021年12月27日 (月) 02:39
新型コロナ感染者数の減少が支持率アップの最大要因じゃない?笑

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